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第3回東京都税制調査会議事録

平成12年11月24日10:00~12:00
都庁第1本庁舎33階特別会議室S6

神野会長  
  それでは、そろそろ時間でございますので、会議を始めさせていただきたいと思います。
 本日はお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから第3回の東京都税制調査会を開催したいと思います。
 最初にちょっとお断りしておきますが、私、風邪をこじらせていて、熱で声がちょっと出ないものですので、こちらにお伺いするような状態じゃなかったんですが、皆さんにご迷惑をおかけするといけないと思いまして、無理して出てまいりましたけれども、無理して出てきたことがかえって皆様のご迷惑にならないように努めさせてはいただきますが、不手際の点が生じることだろうと思います。その点、お許しをいただきたいと思います。
 ご案内のとおり、前回の調査会で中間の取りまとめを取りまとめいたしましたあと、各小委員会ごとにご検討をいただきまして、本年度の東京都税制調査会答申の作成に向けた検討を重ねてまいりました。今回、こうした各小委員会などにおける議論の内容を取りまとめて、私どもの調査 会の提言すべき内容を答申案として作成をいたしましたので、本日はこれについて委員の皆様方のご審議をお願いしたいと考えております。お手元に既に行っているかと思いますが、大部な ものでございまして、盛りだくさんの内容となっております。そこで十分なご審議をしていただくために、本日を含めて、この29日、30日と、3回の調査会を予定をいたしております。その上で最終的には11月30日の調査会において本年度答申を決定したいと考えております。
 また、本日は、ご都合によりまして途中で退席される委員の方がいらっしゃいますので、この点もあらかじめご了承いただきたいと存じます。この答申案はまだ草案の段階でございますので、本日は調査会の運営要領の第2、5により、 これ以降の議事を非公開にさせていただきたいと考えておりますけれども、非公開にさせていただくことに関しまして、ご異議がなければ、そのようにさせていただきたいと思いますが、よろしい でしょうか。

(「異議なし」の声あり)
古館特別委員
  この間も、この非公開のときに、私、確認させていただいたんですが、従前どおりということでよろしいんですね。
神野会長
 はい。そのような処理にさせていただきますので、一たんとりあえずここで非公開にさせていた だきたいと思います。
 それでは、これ以降の議事は非公開とさせていただきますので、大変恐縮でございますけれども、関係者以外の方はご退席をいただきたいと思います。

(プレス関係者等退席)
神野会長
 それでは、早速でございますけれども、お手元の「東京都税制調査会答申(案)の概要」につき まして、事務局に説明をしていただきます。 では、事務局、よろしくお願いします。
事務局(税制部長)
 税制部長の鮎澤でございます。私から、本日、皆様のお手元に配付させていただいております「東京都税制調査会答申(案)の概要」につきまして、説明させていただきます。恐れ入りますが、「東京都税制調査会答申(案)の概要」とあります、薄いほうの資料をごらんいただきたいと存じます。
 まず、今回の答申案は第1章から第6章までの6章構成となっておりますが、1ページ、第1章「停滞の10年と構造改革の視点」。3ページの第2章「地方分権の推進のための税財政改革」。
 6ページの第3章「今後の税制のあり方」につきましては、先般取りまとめをお願いいたしました中間のまとめの内容に、かなり書き込みを行って補充しておりますが、中間のまとめにほぼ対応するものでございます。また、その際、最終答申において整理すべきとされた事項につきましては、議論の上、加筆修正されております。また、次の11ページから始まります第4章から第6章までは、今回新たに盛り込んだ部分でございまして、資産課税、法定外税、都の税財政などの各分野につきまして、これまで各小委員会における議論等を踏まえた上で、体系的に整理を行ったものでございます。
 それでは、早速第1章からご説明させていただきたいと思います。恐れ入りますが、資料の1ページをお開きいただきたいと存じます。
 まず、第1章の「停滞の10年と構造改革の視点」でございますが、これは前回の中間のまとめ と同様、本答申案の総論としての位置づけでございます。わが国の社会経済情勢の変化や目指すべき社会のあり方などを外観したものでございます。この第1章はさらに1の「日本経済の低迷 と財政破綻」、2ページの2「目指すべき社会のあり方」、3の財政構造改革、行政改革、地方分権の一体的改革の推進」の3項目にわたって構成されているところでございます。内容的にはほぼ中間のまとめに重なるものであり、若干の加筆修正をさせていただいてございます。中身は省略させていただきます。
 次に、3ページの第2章「地方分権の推進のための税財政改革」をごらんいただきたいと存じます。この章では「地方財政の現状」、「国庫支出金の抜本的見直し」、「地方交付税の抜本的見直し」、「地方税源の充実確保」、「税源移譲に関する誤解」の5項目を立てて、本調査会の最重要課題であります税源移譲を含めた地方税財政制度改革について、その基本的方向を明らかにしているところでございます。その中で5ページの5の「税源移譲に関する誤解」につきましては、中間のまとめにはなかった新たな加筆部分でございますので、簡単にご説明申し上げます。
 第5項を追加いたしました趣旨は、税源移譲に対してさまざまな誤解があることに鑑み、それらを整理した上で、当調査会としての見解を明らかにしようとしたものでございます。
 ①の、地方税の増税につながるのではとの誤解に対しましては、国民の税負担をふやすことのないよう、現在の国・地方を通じたトータルの税収の範囲内でやりくりすること。
 ②の、国税が減るために国の仕事に支障を来すのではとの誤解に対しましては、もともと地方 に交付される国庫支出金や地方交付税が減るだけであって、国の事務に支障を来すことはないこと。
 ③の、地方の歳出が多いのはむだ遣いによるものであるとの誤解に対しては、地方の事務は 国の義務づけによる事務が大きなウェートを占めるなど、むしろ国の義務づけ、国庫支出金のあり方を見直す必要があること。
 ④の、財政再建の見通しをつけてからでないと税源移譲はできないとの誤解に対しましては、 税源移譲は地方分権の推進から出発したものであり、国の財源に余裕ができてから行うという性格のものではないこと、及び税源移譲によって住民の受益と負担の関係が明確化し、むしろ歳出の合理化に資することになること。
 さらに⑤の、景気が回復してからでないと国と地方の税源配分を見直すことはできないとの疑問に対しては、税源移譲によって地方が地域振興や地域福祉等の充実に向けた施策を展開しやすくなることから、むしろ地域経済の活性化につながることになるといったことを明らかにしているところでございます。
 次に6ページの第3章「今後の税制のあり方」をごらんいただきたいと思います。この章は21世紀の税制のあり方を考える上で、6つの視点を設定し、基本的な見直しの方向を示しているところでございます。6つの切り口につきましては、中間のまとめと同様でございます。特に1の「地方主権を支える税財政制度」におきましては、税源移譲の具体的な手法を明らかにするとともに、詳細なシミュレーション結果をあわせてお示ししているのが特徴的なところでございまして、本方針 案の主要部分の1つとなるかと存じます。
 今後の方向として、(1)の「国庫支出金の削減」におきましては、国庫補助金を基本的に廃止・縮減する一方、国庫負担金は真に国が義務的に負担を行うべき分野に限定して措置すべきこと。
 (2)の「地方交付税の大幅な縮減」では、投資的経費については、国の経済対策に伴う公共事業に要する経費は、基本的には国費によって措置すべきであり、地方債の発行に係る元利償還金を基準財政需要額に算定することは極力排除すべきであること。及び、消費税が応益課税にふさわしく、偏在の少ない税源であることから、できるだけ地方税化を図るべきであること。
 (3)の「国から地方への税源移譲のあるべき姿」では、具体的な税源移譲の方法として、所得税の一部を個人住民税に、また消費税の一部を地方消費税に振り替え、その過不足をたばこ税で調整すべきこと。
 さらに(4)の「段階的な税源移譲の実施」では、税源移譲を3段階で実施することが適当であ るとした上で、第1段階では機関委任事務の廃止に伴う自治事務化相当分など、早急に税源移譲すべきものを地方消費税により行うべきこと、第2段階では奨励的補助金の見直し等を原資と する税源移譲を、移譲税目として最もふさわしいと思われる個人住民税等により行うべきこと、そして第3段階では国庫負担金の見直し等に対応する額を地方消費税によって行うべきことを明らかにしているところでございます。
 恐れ入りますが、表紙に「税源移譲シミュレーション」と書いてあります資料集をお開きいただきたいと思います。
 その1ページの「地方交付税・補助金改革と税源移譲に関する試算」という資料をごらんいただきたいと存じます。これはただいま説明申し上げたような段階的な税源移譲のスキームを表にして整理したものでございます。この表の左側には税源移譲の具体的な税目と移譲額、また右側 には、その移譲額の原資を表示するとともに、それぞれ税源移譲の各段階に対応した金額をあわせてお示ししてございます。
 税源移譲額は、第1段階では1兆3,000億円、第2段階では3兆4,000億円、第3段階では2兆5,000億円の、合計7兆2,000億円でございます。その原資の内訳を整理したものが、この表の右側の地方税欄に対応する金額でございますが、例えば一番下の総計欄をごらんいただきますと、トータル7兆2,000億円のうち、国庫負担金の削減によるものが1兆円、奨励的補助金の削減によるものが1兆4,000億円、投資的経費の削減など地方交付税の削減によるものが4兆2,000億円、機関委任事務の廃止に伴う自治事務化に係る地方税化によるものが6,000億円ということでございます。
 また、表の左側の最下段にあります総計欄をごらんいただきたいのですが、税源移譲総額7兆2,000億円のうち、所得税から個人住民税への振り替えによって税源移譲を行うものが3兆2,000億円、消費税から地方消費税へ振り替えによるものが3兆8,000億円、都道府県と市町村との間の過不足調整のために、国たばこ税から市たばこ税への振り替えを行うものが2,000億円ということでございます。
 こうした税源移譲の結果、国及び地方の税収がどのように変化するかを試算したものが、次の2ページの資料、「税源移譲による税収等への影響(平成10年度ベース)」でございます。この表の道府県という区分の計の欄をごらんいただきたいんですが、道府県税は税源移譲前の14兆円から税源移譲後の17兆1,000億円へと、3兆1,000億円の増加、同様に市町村税では、移譲前の21兆9,000億円から移譲後の26兆円へと、4兆1,000億円の増加、したがって地方全体では35兆9,000億円から43兆1,000億円へと、税源移譲によって7兆2,000億円の増収となるわけでございます。この結果、移譲後の国税総額は44兆円、地方税総額は43兆1,000億円となり、 ほぼ1対1の比率でバランスすることになります。
 また、税源移譲が地方交付税総額に与える影響をシミュレーションしたものが、4ページの資料「税源移譲による地方交付税への影響」でございます。税源移譲により、都道府県の基準財政需要額は、移譲前の21兆3,000億円から移譲後の20兆3,000億円へと、下段の差引欄にありますように、差っ引きで9,000億円の減、基準財政収入額については、移譲前の12兆5,000億円 から移譲後の15兆円へと、差っ引きで2兆4,000億円の増、その結果、都道府県の普通交付税総額は、一番下の普通交付税欄にありますように、2兆6,000億円の減となるものでございます。同様に、市町村の基準財政需要額は2兆9,000億円の減となるものでございます。
 恐れ入りますが、先ほどの「東京都税制調査会答申(案)の概要」という資料に戻っていただきまして、7ページの下段、④「税源移譲に伴う地方団体別の財政力の変化」をごらんいただきたいと存じます。ここでは税源移譲によって各地方団体の財政力がどのように変化するかを分析しておりますが、都道府県レベルでは交付団体が東京都だけであったものが、税源移譲後は、神奈川・愛知・大阪の3府県において財政力の指標が1を超えること、また都道府県全体の財政力の指標が0.48から0.64まで改善されること、さらには一般財源に占める地方税の割合が50% を超える団体が、移譲前には22都府県にすぎなかったものが、移譲後には32都道府県に増加することになるのが明らかにされております。
 次に8ページの(6)「税源移譲に伴って均てん化されない財政力の補てん」をごらんいただきたいと存じます。税源移譲の結果、すべての地方団体によって財政力指数が大きく向上するものの、なお財政力の低い地方団体が引き続き存在することに鑑み、ここではこの解決策についての考え方が示されております。国庫補助金をさらに縮減すること、基準財政需要額を縮減すること、あるいは新たな財政調整制度を創設し、税源移譲に伴って財政力の指標が1を超える団体の税源移譲額の一定割合を財政力に応じて拠出して、地方団体が独自にこれを配分するという3つの選択肢を提示しております。場合によりましては、これらの案を組み合わせて対応すべきものとしております。
 以下、2番目の「活力を生み出す税制」以下の項目につきましては、中間のまとめでも触れて おりますので、恐縮ですが、省略させていただきます。
 続きまして、11ページの第4章「資産課税の今後のあり方」について、ご説明申し上げます。資産課税の各論につきましては、既に第3章等におきまして、一部言及した部分もございますが、この章において改めて体系的にお示ししているものでございます。
 まず、1の「保有課税」につきましては、「固定資産税改革の基本的視点」として、地価と税負担との関係が明確にわかるよう仕組みの簡明化を図り、透明性の高い税制とすることが不可欠であること、活力維持の観点から負担水準の高い商業地等の負担を引き下げることが必要である こと、収益還元法については、土地をめぐる環境変化を踏まえて、商業地等の評価について、より積極的にその導入を図ることが適当であること、などの考え方を明らかにしております。
 こうした考え方に基づいた改革案として、課税標準を「評価額×調整係数0.6×住宅用地の特例」とするとともに、当面の措置として商業地等に係る負担水準の上限を60%に引き下げるこ と、及び負担水準の下限を定め、これを段階的に引き上げることが適当であるとしております。
 また、3の「相続税・贈与税」におきましては、相続税・贈与税の最高税率を50%に引き下げるとともに、累進構造の緩和を図るべきであること、贈与税の基礎控除を200万円程度に引き上げることが適当であること、相続人が引き続き事業を承継していく場合に、事業用資産に係る相続税の納税を猶予・免除する制度を設けることなど、さらなる軽減を図るべきことなどを指摘しております。
 さらに12ページの4「リバース・モーゲージ及び土地の有効利用の促進」におきましては、自助努力に重きを置いた自立型社会の構築を図っていく観点から、国レベルでパイロット事業を実施するなどの普及促進に努めるとともに、税制上の措置を整備する必要があるとしております。
 次に、第5章は法定外税に関するものでございます。ここでは5つの税目について言及しておりますが、パチンコ税までの4税目については提案するとなっており、5番目の昼間流入人口等への課税につきましては、引き続き検討を行うこととしております。
 まず、1の「大型ディーゼル車高速道路利用税」は、大型ディーゼル車の環境負荷に着目した上で、大型ディーゼル車による首都高速道路の利用者を課税対象とし、その税収を環境対策経費に充当する法定外目的税として提案するものでございます。なお、これは首都高速道路という特定エリアへの流入行為に課金を行い、大型ディーゼル車の流入・使用の抑制を図ろうとするロード・プライシングとしての性格を有するものでございます。
 次の2は「産業廃棄物税」でございます。産業廃棄物問題は民間事業者による広域処理を前提とした全国的な課題でありますが、産業廃棄物の最終処分のほとんどを他県に依存している 東京の実態に鑑み、この課税案は都内事業者からの産業廃棄物の排出抑制を図ることを目的とし、産業廃棄物の委託処理重量を課税標準として課税する法定外普通税として提案するものであります。
 次の3の「ホテル税」でございますが、旅行者等に行政サービスに対する負担を求め、これを東京の魅力を高めていく施策に振り向けていくという好循環を形成していくことが、国際都市東京の魅力を高める上で重要な意義を有することに鑑み、諸外国において既に100円程度の滞在税等が課税されていることなどを参考にしながら、都内のホテル等宿泊者に対し定額課税を行うというものでございます。
 次の4は「パチンコ税」でございますが、これは市場規模20兆円のパチンコ産業が、全国に470万台もの遊技台を抱え、毎年大量の廃棄台を排出する資源浪費型産業であることから、環境面においても一定の節度を持った営業がなされるべきであるとの考え方に基づいたものでござ います。課税の仕組みといたしましては、パチンコ廃棄台の排出抑制を図ることを目的とし、都内のパチンコ店経営者に対し、パチンコ台等の新規設置台数を課税標準として課税する、法定外普通税として提案するものでございます。
 次の5は「昼間流入人口等への課税」でございます。330万人を超える他県から都内への昼間流入人口は、東京に膨大な財政需要をもたらしております。現行の住民税や地方交付税の算 定におきましては、これら大都市特有の財政需要に十分に対応できないという実態がございます。そこで、これを解決する手段として、昼間都民の通勤行為や就業行為に着目した課税、あるいは昼間都民を雇用する企業に対する課税など、いわゆる法定外税の創設に向けた検討をいたしま したが、人の往来や雇用に与える影響、重課税の問題等、あるいは負担する側となる県住民等の理解など、さまざまな課題があることに鑑み、引き続き今後検討を行うこととしております
 次に、本答申案の最終章となります第6章、「東京都の税財政」についてご説明申し上げたいと存じます。恐れ入りますが、13ページをごらんいただきたいと思います。第6章におきましては、歳入、歳出にわたる都財政の現状や財政再建に向けた取り組みについて言及した後、3の「今後における都の財政運営の方向」にございますように、4点にわたってその方向を打ち出しております。
 まず、(1)「歳入確保努力」におきましては、課税・徴収両面にわたるさらなる徴税努力が必要であること、(2)の「平成12年度以降の都税収入見込み等」では、12年度から15年度までの間の都税収入は、財政再建推進プランで想定されている額を一定程度上回ることが期待できること、及び税源移譲の結果、都への税源移譲額が3,757億円増加すること、14ページの(3)の「歳出全般に亘る徹底した見直し」では、シーリング方式について、一律の適用の是非を含め、その用 い方の限界等について十分に検討する必要があること、また限られた財政資金を効果的かつ効率的に投入するため、都の重点施策に対して財政資金を重点的に投入していく必要があること、(4)の「都の重点施策に対する取り組みの強化」では、都の重点施策が東京の経済力を掘り起こし、安心と自立を支える新たな福祉施策の構築、健康で快適に暮らせる都市環境の創設であるといったことを明らかにしております。
 最後の4は「都における現行税財政制度上の顕著な問題点と対応の方向」を5項目にわたって整理したものでございます。既に他の章において言及したものが多く、詳しい説明は省略させていただきますが、新しく(5)の①「少子社会対策としての保育施設に係る固定資産税・都市計画税の軽減」、及び②「放置自転車対策としての自転車駐輪場に係る固定資産税・都市計画税の軽減」について提言するものでございます。
 以上、まことに雑駁でございますが、答申案の概要説明にかえさせていただきます。ありがとうございます。
神野会長
 どうもありがとうございました。
 ごらんいただきましたように、この案は前回中間取りまとめでお示しした第1章から第3章までと、それから全く新しくお示ししております4章からの部分と、大きく2つに分かれてございます。
 早速審議に入りたいと思いますけれども、今ご説明しましたように、大きく2つに分かれておりますので、まず第1章から第3章まで、既に前回の中間取りまとめでもご審議いただいているところでございますが、先ほどご説明がありましたように、前回のご議論を踏まえて修正した点、それから新たに内容を加筆した点それからシミュレーションなどを行って資料的に少し充実させた面などございますので、改めてご意見を伺えればと思いますので、まず1章から3章までにつきましてご意見をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
水城委員
 私はマスコミから1人入っておりますので、専門家じゃなくて、市民の目からこれを読むとどうい うことになるかということで、若干申し上げたいと思うんですが、基本的には中間報告で骨太な税源移譲を中心にした方向が出され、それをもとに、このシミュレーションにありますように、大変精緻な積み上げの計算をしたりして、具体策が出ております。いろんな報告書を私は見ておりますが、これほど精緻に具体案を提案しているというのは類を見ないものでありまして、限られた時間でございましたけれども、事務当局のご努力に心から敬意を表したいと思います。これから中央でもいずれ具体策が検討される時期が来るかと思いますが、その際、これは大変貴重なたたき台といいますか、具体策になるものだろうと思っております。ただ、これは具体案になればなるほど、地方税財政仕組みそのものが複雑でございますので、非常に市民の目から見るとわかりにくい面がたくさんございます。
 例えばこれを見ますと、地方消費税に移譲して3兆8,000億円というふうにあるわけですが、うっかりすると、私たちの納めた消費税が3兆8,000億円も国から新たに地方へ移るような、どうしても錯覚に陥ってしまうんですが、大半は交付税でやっているものを置きかえるというわけですね。ですから、私の計算では、純粋のネットのニューマネーとしては、ふえるのは7,000億円ぐらいですかね、その程度だと思いますが、そこら辺も誤解なく読んでもらう必要があると思います。この全体のお金の流れが、税と、それから補助金、国庫支出金、交付税、どういうぐあいになるのかということを対外的に説明するときには、できるだけ図解も含めて、わかりやすく対外的にアピールをしていただきたいということが1つ。
 それからもう一つ、これによりまして中央集権的な財政体質がかなり是正されて、税源が移譲されて地方が独自に個性ある住民サービスができるようになると。そのかわり国からは余り面倒を見てもらわないということでございますが、具体的に一体どうなるのか、イメージがなかなか沸いてこない。そのために具体例として、例えばこういう事業は今は国の基準に縛られて自由な発想で個性ある行政ができないんだけれども、これによって、こんなふうに新しい発想で、地方のそれぞれの発想で、自治体の発想でできるようになるんだというような具体例であるとか、それから予算シーズンになると、地方から大挙上京して陳情合戦をやっているわけでございますが、一体そういうものがどうなるのか。完全になくなるとは思いませんけれども、事業によってはそんなことをしなくても済むようになるんだとか、何か具体的なイメージをお示しいただくと、より説得力のあるものになるんじゃないか。何のためにこれをやるんだということを理解してもらうために、具体的なイメージをお示しいただくとよろしいかということでございます。
 それから誤解を解くためにいろいろ書いてございます。これは大変結構なことでございますが、大事な点が抜けているんですね。というのは、私は今まで中間報告について、私は商売柄いろんな人の意見を聞けますので、聞いてみましたら、一番大きい誤解は中間報告はなかなか立派なことを言っているけれども、しょせん、これは力の強い東京、強者の論理ではないのか、東京都が結局ひとり勝ちになるのではないかという壮大な誤解なんですね。これは誤解の中にぜひ入れて、そうじゃないんだと。例えば3つの解決策を示してございますね。あのように決して東京都がひとり占めしてひとり勝ちするつもりは全くないんだということを、ほかを読みますと書いてありますけれども、この誤解のところに入れていただければいいのかなと思います。
 それから、この誤解の中で②のところ、30ページにございますが、国税が減って国の仕事に支障を来すと。これは主として大蔵省の誤解だろうと思うんですが、大蔵省で言ってるのは何か私もよく理解できないんですが、国税が減った分、場合によったら赤字国債で埋めなきゃいけないと。それが耐えられないというようなことを言っているわけでございまして、それに対する誤解を解く必要があるんじゃないか。
 それから、④、⑤で、財政危機、あるいは景気がこんな状況で地方の税源移譲なんていうのはまだ早いと、これ、誤解もあるわけでございますけれども、これに対する説明はここに書いてあるとおりではありますが、より一層誤解を解くために、ここにもありますように、一気に税源移譲を進めようというわけじゃないので、段階的にやっていくわけでございますから、そこら辺のところも触れておいたほうがいいのかなという感じがいたします。
 それから外形課税のところも、これは含まれるんですか。3章まで。
神野会長
 はい。3章の分に関して言えば。
水城委員
 外形課税は、たまたまタイミングよく自治省案が先日出されまして、それに対する見解が示さ れておりますが、基本的にはこの答申でも評価しているわけですが、銀行の部分についてはほとんど事業税を負担しないで済むようになると、こういうことでございまして、この指摘は妥当な指摘だと思います。これは1つの問題点だと思いますね。
 ただし、法律改正を行うことは分権の流れに逆行すると書いてあるんですが、ここら辺がどう考えたらいいのか。今、特例がありまして、東京都はそれを使って銀行課税をやっているわけでございますが、これは今は外形課税は何も国が動いていないわけですから、当然この特例は必要になるわけですが、この自治省の案が実現すると、本格的な外形課税が実施されるわけでありますから、この特例が本当に必要になるのかどうかというのは、ちょっといろいろ議論のあるところではないのかなと思います。今は所得によらなくても、地方自治体の判断で外形課税ができるという特例でございますが、もう自治省の案が実現しますと、全部網をかけた外形課税が実施されるわけですから、本当にこの特例がどうしても必要なのかどうか、必要ならば、きちっと説明をして、やはり特例をなくしてはいけないというふうに説得力のあるように書く必要があるのではないか。
 以上でございます。
神野会長
 どうもありがとうございました。
 多方面にわたってご指摘いただきましたが、本文で対応すべき部分と、参考資料で、いわばつけ加えて対応してもいいような部分のご指摘があったかと思います。
 第1点は、税源移譲のやり方については非常に複雑になるので、純増部分といいますか、所得税にしろ消費税にしろ、一部分は交付税特会に入っているわけですから、そこの部分が純増にならないはずであると、こういうご指摘だろうと思いますので、国と地方の政府間財政関係を少し図で説明して、参考資料か何かでつけていただくというような対応になるかなと思います。本文を修正するというよりも、参考資料か何かで少し説明をわかりやすいようなものにしておくということで はないかと思います。
 第2点は、自主財源が増加することによってどういう行政を打つことができるようになるかということだろうと思います。メリットとしては、もちろんここに書いてあるような、自己決定、自己責任ということになるわけですけれども、具体的に言うと総合行政ができるということになるのではないかと思いますので、本文でどの程度書き込むかということは調整させていただいた上で、ご指摘全体が都民ないしは国民にわかりやすいような具体的な記述をするようにというご趣旨だろうと思いますので、何か具体的な例なり何なりを盛り込むかどうか、少し考慮して対応していきたいと思います。
 それから誤解については、多分ひとり勝ちを東京がしてしまって、税源移譲によって東京に税源が集中するのではないかということについては、十分考慮しているという項目を1項目立てた方がいいというご提案だと思いますが、これはちょっと考慮させていただいた上で中にはそういうことに対応するということがきちっと書かれているわけですから、どこでどういうふうに書くかということを含めて検討していきたいと考えております。
 あと、中に書かれている、いわば誤解の解き方ですね。国のほうの赤字国債がふえるのではないかとか、景気対策と必ずしもバッティングするものではないというような問題の書き方について、これもできるだけわかりやすくということだろうと思いますので、少し事務局と相談しながら精査していきたいと考えております。
 ほかに、今の水城委員のご意見についてなければ、建設的なご意見でございましたので、参考資料ないしは本文にどこまで書き込むかを含めて対応させていただくということにさせていただければと思います。それでよろしゅうございましょうか。
 それから外形標準課税のことについては、まだ見えていない部分といいますか、当面の部分と見えていない部分もありますので、銀行課税については改めて問題点などを別途資料か何かで出すかですね。書き方は、余りここで書いても、少し冗漫になるかなという気もしますので、別途、問題点というような形で参考資料で対応するかどうか、ちょっと検討させていただければと思っています。
古館特別委員
 関連ですが、今の法人事業税への外形標準課税、これは49ページを何回か読み返したんですけれども、ここでは結局、都税調としてはどういう態度をとることなのか。また、後ほど私の意見は述べますけれども、ここは何を言わんとしているのか。つまり、必要なのか、導入について賛成なのか反対なのか。そこのところが、単純なんですが、今とりあえず質問だけさせてほしいんです。この文言を見ながら、何をこれは言わんとしているのかなと。これは素朴な疑問なんですが。
神野会長
 外形標準課税については、ここの趣旨としては、まだ自治省から提起されたといいましょうか、 提案された段階ですので、この案については一応評価するという書きぶりになっていると。しかし、問題点はあるんだという書きぶりになっていると、こういうことでよろしいですよね。一般的には評価する、原則としては評価するけれども、問題点は東京都から見てあると。そういう点はこういう点だということを書いていると。
主税局長
 そういうことなんですけれども、法人事業税収の安定化というのは、もうご案内のとおり、地方団体共通の悲願でありまして、東京都で言いますと、ピークと比較すると1兆円も差があるような税収状況では、とても安定的な行政サービスが提供できないという、そういうことを前提に、もちろん、景気とか中小企業とか、いろいろ問題がありますけれども、そうしたことを十分考慮した上で外形標準課税の導入については賛成であるというのが基本となります。
 ただ、いろいろ、先ほどの水城先生のご質問の関連もあるんですけれど、72条の19をどうするんだという、そこのところが明確に書かれていないわけでありまして、全体は賛成なんだけれども銀行については問題があるという基本的なスタンスを立てた上で、72条の19は残せということです。もちろん、自治省の案でも72条の19は残るわけでございますけれども、法改正が行われた場合には、72条の19というのは法改正以外の部分でしか働かないということになりますので、そうすると先ほどお話のありましたように、銀行については東京都の条例なんていうのは適用の根拠を失うわけでありまして、具体的な言い方を、今私が申し上げた話をさせていただきますと、銀行を全体法改正の対象から外せということであります。それ以外はこれでということです。自治省案の中に特殊法人等は外れておりますので、それと同じように、特殊法人等と同じような扱いを、銀行の特異性に鑑み外していただければ、銀行は銀行の特性に従った課税の仕方が工夫できるかと、そういう考え方でありまして、最後の課税自主権とか何とか言ってるのは、わかりにくいんですけれども、要はそういう話なんですね。
 ですから、これは法改正は法改正でやって、勝手に東京都全体や地方自治体全体がほかの業種をやっていいんだという、そういう話ではなくて、銀行は例えば人件費率が2割、利息についても一般の企業と同じように、支払利息と受取利息を通算をして、それで受取利息のほうがはるかに多い銀行を、支払利息が中心である製造業等のほかの法人と同じように、そこをベースにして課税するのは、どう考えても税負担が少なすぎる、新たな不公平を生むと、そういうことであり ます。会長がおっしゃいましたように、そこも含めて、再度、技術的な整備も含めてやらせていただきたいと思います。
古館特別委員
 全体的なことですが、さっきの中間のまとめも、この答申案もそうなんですけれど、私は大前提として押さえなければならないのは、税に関する法律とか条例の制定の場合には、今の憲法との関係もきちっと論ずる必要があるのではないかと。これまで体系的に、相当微に入り細に入り書かれているものですから。そうすると、何か読んでいると、いわゆる広く薄く負担、応益負担だけが前面に出てくるというとどうかと。私は素人なんですが、税というのはもともと、私なりに勉強さ せていただいていたのは、憲法でいう、14条でいう法の下の平等であるとか、あるいは25条の生存権だとか、あるいは29条の財産権とか、つまり法の下の平等というのは、お金のある人は少なく税を負担していいというものではないと思います。そういう部分で言うと、現憲法は税制の基本を応能負担原則ということで、これは恐らく税の世界では定説になっているのではないかと思うんですけれども、これはいろいろ議論のあるところかもわかりませんが、ただ、そういうことで今日まで税制というのはやられてきたと理解をしております。したがって、この問題についてのきちっとした大前提があっていいのではないかと、私自身は考えております。
 それと、その問題と関連するんですが、広く薄く負担、世代間の公平ということで、地方の問題は応益が原則だということで言って、ここでは論じているんですが、ただ、今は正直言って、その広く薄くの最大の問題というのは消費税ではないかなと思うんですね。税収の大きさから見ても、それから子どもさんから赤ちゃん、収入のない人からもあまねく税を徴収するという点で言いますと、その最大のものは消費税ではないかなと。そうすると、地方だけに応益原則というのが今出されようとしている流れではなくて、国も含めて全体として税のあり方そのものが応益という形でいきますと。私、さっき憲法の問題と応能負担の原則の問題をなぜ言ったかといいますと、そこの部分をやはり外してはならないのではないかなというのが、私自身感じているところです。
 先ほど、消費税の問題が、この答申の基本も消費税を原資とする、かなり具体案が出されております。私、誤解ということではなくて、今回の消費税の場合は5%のうちの一定税率を地方消費税のほうにもっと増加させるという提案であることは理解をしているんですが、政府税調のほうが、消費税については基幹税目として、国の中心の税として、大宗をなすものの税として検討しているということになりますと、結局は消費税の引き上げに、税率の引き上げにつながっていかざるを得ないということになりますと、国のほうでも挙げて応益負担が強まっていくという傾向になるのではないかということを非常に私は危惧しています。そういうことがこの答申を出すに当たっての1つの大きな考え方というか、そこの部分がもう一つ大きな点として論じられてもいいのではないかと私は思っております。
 それと、しゃべっていますので、ずっとしゃべってしまいますが、税源移譲についてですが、私も神野先生、金子先生のものや、重森先生だとか、一連の税財政問題の権威だと私は思っていますし、信頼もしているわけですが、神野先生なんかが前打ち出していた考え方、重森先生もそうなんですけれども、所得税の住民税への移譲、これが大きな基本に据えられていたと私は理解しております。ですから、地方消費税というのは、東京都の政策室、報道室、あのときは企画審議室だったですかね、そこのシミュレーションの中では確かに消費税を地方消費税としてということがありますが、それがなくても本来、税源移譲というのは、先ほど言ったように、所得税と住民税の中での、いわゆるパイのこっちへ移譲なわけですよね。ですから、そこのところで、本来、地方財源、税源移譲というのを基本に据えるべきではないかと、私はずっと、先生なんかの書いているのも読みながら、大変私自身大きな影響を受けましたし、また、そういうことを先生だけじゃなくて、ほかの先生たちも、同じような形で言われている先生もいますので、そういう税源移譲であるならば、やはり所得税の住民税への振り替えということを基本にすべきだと私は思っております。
 それと、所得税についてもかなり論及されておりまして、最高税率の引き下げということもここで論じられているように思いました。これはさっきの広く薄くじゃないんですが、結局はお金がいっぱいある人の税負担が軽くなる。  同時に、ここで課税最低限の引き下げということも論じられておりますが、課税最低限の問題で言いますと、ひとり暮らしの方の場合の課税最低限というのは111万ぐらいだと理解していますけれども、私は今の生活実態から見て課税最低限が高すぎると決して思っていないし、ここの論じ方というのも、こういう形で論じることについて私は非常に異見があります。
 それと、最後に法人事業税の外形標準課税についてですが、法人事業税が導入されていきますと、また利益を上げている大企業なんかが、税シフトが、いわゆる税率が、税負担が下がる状況になるのではないかと思って。これはちょっと私の誤解かもしれませんが、そういう仕組みにまた一層なっていくのではないか。つまり、大企業の税負担が一層軽くなっていくことと、同時に赤字の中小企業への税負担が重なってくる。
 その中で、東京都の税制調査会ですから、あえて言わせていただきますが、都道府県の外形標準課税が導入された場合に、税収の安定というのはわかるんですが、東京都の場合は税収の安定というよりも低値安定になっちゃう。つまり、東京都の外形標準課税は、どの学者の計算式を見ても、東京都はかえって税収が落ち込んじゃうという結果が出されております。
 それから最近の傾向ですが、「東洋経済」という雑誌で、フランスだとか各国で、今はむしろ外形標準課税が廃止とか見直しの方向にあるという記事も目にしまして、このことについて言うならば、むしろ所得の低い人、あるいは中小零細企業がしっかり頑張っている部分についての税を課すという部分については、私はやっぱりするべきではないというふうに考えております。
 以上です。
神野会長
 どうもありがとうございました。
 ただいまの問題について言えば、私どもは財政学者なものですので、国税は応能原則、経済的な力に応じて、それから地方税は公共サービスの利益に応じてというのが、これは財政学のほうの原則でございまして、憲法で言っているのは公正な税負担ということだろうと思いますので、シャウプ勧告も国税は応能原則、それから地方税は応益原則という考え方なんですね。19世紀末のミンケルの改革というのがドイツにあるんですが、そのとき以来、こういう考え方に立っております。おっしゃるような形で、憲法に明確に応能原則を規定した例がなきにしもあらずだったと思いますが、ワイマール共和国の憲法か何かだったか。余り、どちらかでやれということではないんですね。おっしゃることはよくわかるんですが、ここでは一応国税のほうは応能原則でやり、地方税のほうは応益原則でいいんじゃないでしょうかと。
 ところが、今おっしゃるとおりに、税調の中間答申を見ても、税というのは会費だと言ってるんですね。会費ということはどういうことかというと、本来、地方税を正当化する議論なんですが、会費というのは出入り自由ですよね。地方は、その住民になるか住民にならないかというのは、出入り自由なので、応益原則で肯定するときに税会費論というのがあるわけですね。ところが、国税全体のほうがそういう応益原則で課税するような税金になっていくのであれば、わざわざ国で取り 上げて地方に戻す必要はないんじゃないでしょうかと。これはワイマール共和国のときに交付税をつくったわけですけれども、そのときも所得税のようなものを累進税率で課税すると、結局地域的にかなり税収が偏在してしまうので、一たん取り上げて、それを配り直しましょうということにしたわけですね。
 ですから、国のほうが徐々に応益原則のような税構造になっていくのであれば、わざわざ国で一たん取り上げて配る必要はないのではないでしょうか、という観点から税源移譲を主張していると、私の理解ではそういうトーンなんですが、事務局のほう、この応益原則、応能原則についてはそれでよろしいですね。いずれにしても、税というのは正義の原則に反してはいけませんので、そうであれば応能原則にふさわしい税構造にしてくださいと、こういうことになって、利益原則に課税するような税金であれば、これは地方税で、受益と負担が明確になるような形で行うべきであるということで貫いているかと思います。
 あと、課税最低限や法人事業税などの外形標準化に伴って、言いかえれば担税力と申しますか、税金を負担する能力の低い人にも考慮すべきではないかというお話でございますが、それはもっともなお話なんですが、実際には課税最低限が日本の場合には世界的に見ると非常に高くなっておりますが、これはさまざまな福祉関係の政策を控除でやるというところがあるからなんですね。むしろ、控除でやるよりも手当で、例えば児童手当とか、あるいは扶養家族に対する手当とかでやったほうが実は公平なので、必ずしも課税最低限が高いことが貧しい人々にとって配慮しているかどうかというのは、経費の問題を考慮しないとなかなか言い難いと思います。
 それから法人事業税がフランスなどで廃止されているといっても、これは前回もご説明しましたが、賃金部分が廃止されているわけですけれども、廃止されても、その廃止した分については国が全面的に地方に渡すことになっておりますので。地方が文句を言ってるのは、これから増税するかもしれないのに、その分は補てんしてくれないじゃないかということは言っておりますけれども、国の政策として、国際競争力を高めるために賃金に係る部分については地方税を廃止してほしい、そのかわり国のほうから出しますからと、こういうことになっているんだと思うんですね。
 しかも、これも日本の場合にはどうもいいとこ取りというか、全体の政策体系の中でそれが出されているのに、一部だけ取ってくるんですが、フランスの場合には企業に対して労働時間の35時間制を受けてくれないかと。この雇用の厳しい状況のもとでワークシェアをし合いましょうと。みんなで働くことをシェアし合いましょうと。そのために労働時間を1週35時制を受けてくれないかと。そのかわり税負担のほうは、賃金に係る分は減らしますからという、バーターになっているんですね。日本も、そういう意味から言えば、本当は税の政策体系全体の中で考慮して、どういう動向にあるのかということをちょっと考えてみないといけないんじゃないかと思います。
 それから中小企業と大企業の問題について言いますと、必ずしも中小企業に不利ということではなくて、本当は中小企業に有利なんですね、外形標準は。例えば大きな大自動車会社であっても、毎日毎日何億円かけてテレビのスポット広告をしていても、利益が100万円しか上がらないということであれば、中小企業と同じように負担せざるを得ないものですから、中小企業、大企業、どちらが有利かというと、この税制そのものはむしろ中小企業にとって有利だろうと。ただし、今度はベクトルを変えて、赤字企業か黒字企業かというベクトルで見ると、赤字企業にとって不利になる。中小企業か大企業かということになると、活動量に比例して課税しますので、大企業に必ずしも有利じゃなくて、むしろ不利になる、こういうふうに考えられるのではないかと思います。事務局のほうで、何か補足していただくことはありますか。
主税局長
 いいえ。
大木田特別委員
 中間のまとめから見ますと、大変よく整理されているなという印象を持っております。今回、シャウプ税制以来の社会構造の変化の中で、さまざまな要因の中で、ちょうどうなぎの寝床のように、必要に応じていろいろと対応されてきました。  例えば前の都庁は29の建物がありまして、そこでさまざまな皆さんが来て、1日7,500名程度の皆さんが都に来たわけですけれども、それを集約的、体系的に、第1庁舎、第2庁舎ということで、新宿に移して、体系的、総合的にきちっとしたわけでありますけれども、今は1万5,000名程度の人が都庁に来ているわけでありますが、今までの社会状況の変化にそれぞれ対応してやってきたんですけれども、「停滞の10年と構造改革の視点」ということでありますけれども、非常に体系的に基本的な今後の税制のあり方を、政府税調等が今までやってきたわけですけれども、きちっとした今の状況に応じたものにしなければならないと思っております。
 そういう意味においては、都税調という立場で、今まで国の政府税調等が進めてきたそういう立場とは視点を変えて、我々地方の立場から、これを整理して答申を出して、今のこの時期に提案をするということは非常に大きな意義があるなと思っておりますので、今回のこの答申はそれだけの価値があると思っておりますし、これを踏まえて国全体も、税そのものを、今の時点における、21世紀を迎えるという新しいそういう流れの中においての、これがインパクトになればいいかなと思っております。
 そういう中で、先ほど東京のひとり勝ちという話が1つありましたけれども、例えば国税が49兆円ありますけれども、そのうち16兆円が東京で上がっているわけでありまして、地方に34兆円、いろんな交付税や補助金等で行っている中で、東京にはたった1兆円しか来ていないという、こういう現状があります。ややもすると、東京は大都市で1,200万、人口の1割がいますので、何かにつけて東京の影響性が大きいために、どうしても東京バッシングのようなことが過去にもありましたけれども、しかしそういうことを配慮することは十分大事だと思っておりますけれども、大都市としての具体的な数字をいろいろと挙げてあるのは私は大変結構だと思っているわけですけれども、東京都の財政需要という、首都である東京、あるいは首都圏が、信越まで入れると3,800万の中心である、今は1日300数十万の人が来ているということでありますけれども、そういうような東京の状況を十分考慮した立場で、東京という立場で答申する以上は、これをやっていく必要があるのではないかと思っております。東京が大きいから、いろんなことを配慮はしなければならないですけれども、東京の抱えている状況を、つぶさに具体的な裏づけをもって皆さんに認識をしてもらうということは非常に大事だと思っておりますし、特に政府関係、国のほうもそのことは非常に重要なことではないかなと思っております。
 それからもう一つ、税を体系的に見直すということと、それから税の増収の確保、新しい税制等を設けるかどうかということについて、私の考え方を申し上げておくとすれば、今、税の体系を1回きちっと整理することが必要であって、税を部分的に、うなぎの寝床のような形で拡大して、財政が厳しいからといって、安易にそれを徴収をするということはいかがなものか。体系をきちっと整理した中で、さらに必要なものがあるとすれば、その時点において税の検収、取りやすいところから取るというようなことで安易に流れてきてはもういけないのではないか。先ほどから出ておりますように、税の公平性、公正性という、そういう1つの観点から非常に歪みの部分がありまして、それがさまざまな政治不信やさまざまな状況にも結びついているというようなことも考えますと、あくまでも公正性、公平性というような観点を大事にしながら、体系的な見直しを図っていく。
 例えば消費税の問題が、今5%で地方消費税がありますけれども、これは税源移譲の中で、消費税の中で地方消費税をふやしていくことが、即、消費税のアップにつながるというような懸念じゃなくして、5%という中においてそのことを図ってくる。消費税については福祉目的税化がありますけれども、そういう福祉に必要なところを使うわけでありますけれども、それが消費税アップにつながるということではなくして、足りない部分は国の税金の中から、消費税とは別のところか ら国がそれを補てんをするということでありまして、消費税がすぐアップするというような、短絡的にこれを結びつけてとらえていくことは適切ではないというふうに私は考えております。
 以上でございます。
神野会長
 どうもありがとうございました。
 3点ばかりご指摘いただきましたけれども、重要な点はこの答申を出す意義に触れる部分でございますが、これまでは社会状況に対応して屋上屋を重ねるような改革を続けてきたために、今や体系をきちっと整理し直す時期に来ているのではないかと。もうこれ以上屋上屋を重ねるような改革をしてもむだなので、地方税を含めた、国税、地方税を通じる税体系をきちっと整理するという方向性を出すことが非常に重要なのではないかというご指摘と、それから東京という大都市に固有な財政需要が存在するので、いわゆる東京のひとり勝ちにならないような配慮を書き込むことを考えるというふうに先ほど申し上げましたけれども、その際でも、やはり東京の固有の財政需要なり何なりをきちっと訴えていくべきではないかというご指摘だろうと思いますので、そこら辺の書き方を事務局と相談していきたいと思います。
 最後のご指摘は、全くおっしゃるとおりでございまして、ここでは最初の前提が国税と地方税の税負担そのものについては触れない、逆に言えば国と地方の財政関係をすっきりして、むしろ全体としてスリムになるんだというトーンで書かれていると思いますので、おっしゃることを配慮しながら、より一層それが明確になるようなことがあれば修正をしていきたいと思っております。
 それで、ちょっと時間もないものですし、それからできればきょうは全体的に多くのご意見を伺った上で、次回になるべく多く修正して、この調査会の意見を反映するような内容にしていきたいと思いますので、また1章から3章についても、論点が残っているようであれば戻ることもあり得べしということで、新たに加わりました4章から6章について、ご意見ないしはご質問をいただければと思いますが、いかがでございましょうか。
大木田特別委員
 1つ、質問だけでよろしいですか。
 私は贈与税については、今の60万から上げるべきだという考え方でおります。300万がいいか、500万がいいか、200万がいいかということですけれども、今回、200万程度ということにした背景的な考え方がもしあれば、ちょっと伺いたいと思います。
神野会長
 これは事務局か、あるいは渋谷先生のところでご議論されているのであれば。
渋谷委員
 まず、事務局のほうから。
事務局(谷口参事)
 200万というのは、現行の額が長い間据えおかれていて、それから考えてその程度が必要ではないかということで出しております。理論的に幾らだというような形ではありません。
大木田特別委員
 わかりました。私はこの問題はずっとこの4、5年考えてきて、幾らが適当であるかと、いろんな 人にいろんな意見を聞いてみました。それぞれの立場立場によって違うんですけれども、1,000万という人もおりましたし、それはちょっと多すぎると。これは税体系全体のバランスからちょっとおかしいということで、二、三百万がということが、私が聞いてきた限りにおいてはそういう意見が多かったということであります。特にそういうことに関心を持っていましたから、今そのことを聞いたわけです。
事務局(谷口参事)
 据えおかれていた期間を計算しまして、50年から国民所得が3倍引き上がっているので、60 万から3倍にすると180万ということで出したわけです。
神野会長
 据えおかれていた期間からスライドさせたということですね。贈与税は相続税の補完税ですの で、相続税との関係があるかと思いますが、渋谷先生、何かコメントしていただくことがあれば。
渋谷委員
 相続税というのは資産税であるわけですけれども、これは現状で大体相続の5%ぐらいのもの にかかっているような状況があって、だれにでもかかるような税ではないわけですね。それを考えますと、贈与税も同じように、ごく普通の人には余り縁がない税であるべきだろうというふうに考えられるんですが。その点と、贈与というのが相続税回避に使われやすいというようなことを考えますと、確かに今おっしゃっていただいたとおり、バランスとしては二、三百万ぐらいが適当だというのは、合理的な意見ではないかと思うんですが。
神野会長
 よろしいでしょうか。相続税というのは、シャウプ勧告なんかでも、巨大な富を分散させるので、本来、余り低資産を持っている方に税金をかけるという趣旨ではないと。しかし、一方で相続税を逃れるために贈与税をかけなくちゃいけないので、そこら辺のバランスをとりながら決めたということでしょうかね、200万というのは。
古館特別委員
 これは質問なんですけれども、1つは、この中で法定外普通税となりますと、製造元だとか、車なら車の問題について、排ガスなら排ガスという形で言いますと、製造する大もとだとか、だけど、それを買って使う人、そこの部分の、どこに税の負担を求めるのかという問題が、これは非常に悩ましい問題だと思うんですが、この部分と、それから川崎だったでしょうか、たしか自動車に税をかけることを今回は見送ったと。その場合に法定外普通税みたいなのをやる場合のコンセンサスといいますか、民意の反映、それをどういうふうにするかという部分の、そういうあり方、ルール、そういうものみたいなのはここの部分では触れなくてもいいのか、あるいは私が読んでいないのか、そこの部分についてお考えがあればと思っています。
神野会長
 先ほどのは神奈川県の自動車税のことですか。
古館特別委員
 ああ、神奈川県。失礼しました。
神野会長
 あれは東京都は既にグリーン化ということで、既存の税制をグリーン化するということで実施しているわけですね。神奈川県はむしろ増収といいますか、税負担を増加させることによってグリーン化を達成しようと。東京都の場合には税収はいずれ中立的にするという方向だったんですが、負担を上げることで、むしろ既存の税制をグリーン化しようとしたんだけれども、今のところ知事は提案をあきらめていると、こういう状態だろうと思いますので、既存の税制にかかわることだと思います。
 それから法定外税については、シャウプ勧告も言ってるんですけれども、本来は地方の税金というのは余り数が多いことは好ましくないんですね。基幹的な税目をちゃんと、シャウプ勧告では固定資産税は市町村に、事業税は都道府県にと、独立税をきちっとやって、それで財政基盤を強化しなさいと、こういう勧告をして、余り細かな税金は整理しなさいという勧告だったんですけれども、ここで言っているのは、税収を必ずしも目的にするというよりも、地方税として余り多くの税金 をつくることは好ましくないので、環境とか生活にかかわるような消費行為で、都の課税政策に合っているような行為をしてもらうような税金を仕込んだということです。
 税の仕込み方の原則は2つあり、法定外税をつくる原則は2つありまして、1つは国と地方とでどういう税金を分け合っていくのかという考え方なんですが、これは一応ここにも書いてありますように、応能原則と応益原則、この2つのルールがあるわけですね。あとは水平的に、つまり、他の都道府県の人や、それぞれの地方公共団体ごとに、自分の住民じゃない人に税金をかけるという税金ばかりつくられると困るので、通常は水平的に、どうやって税金を割り当てるのかというル ールが、考え方がもう一つあるわけですね。水平的にどうやって割り当てるかと。ここの場合も大体は課税標準がその地域にあるものと考えて税金をつくっておりますので、考え方としては物税などについては課税標準がそこにあること、それから人税については人がそこに住んでいること、というようなルールで一応はめ込んでいるという理解でよろしいですね。国と地方との配分、それから水平的な配分を考えているということだろうと思います。
 それを新たに明記する必要があれば、どこかに書きますが、一応この程度で、国税、地方税さらっと書いておりますので、法定外税についても都の政策を配慮した書き方になっておりますので、この程度でいいのかと思いますが、もう少し書き込むということであれば、何かございますか、事務局のほうで。
古館特別委員
 私が質問したのは、こういうことをやりますよということをする場合に、直接的に、例えばディーゼル車の排ガス規制というと、その車を持っている人だとかいうふうに課税対象がいく。もともとは製造元でちゃんとやりなさいよという議論も一方であって、だけど同時に法定外普通税になりますと、その持っている人のところに税がいく。その場合に、いや、こんなのはいやだよと。つまり、今、会長がおっしゃったように、環境に今回絞ってという、そこは私は別に何か異議ありとか言ってるのではないんですが、そういうことを実施しようとする場合の民意の反映とか民主的なルールの問題を、どこかで何か押さえておかなくてもいいのでしょうかという、そういうことなんですが。
神野会長
 局長、何かございますか。
主税局長
 これは当然、法定外税を創設することについては、法律的な手続の規定がございますので、その規定に則ってご議論いただき、それからそれを詰めていかなければいけない。1つは、まずこの税調で答申をいただいたあと、あるいはその過程も含めて、いろいろ公にされていくであろう内容についての反応の話、これは外ではアルファーとしてはあると思いますけれども、正式には当然のことながら都議会の同意が必要でありまして、もしこの中で何かをやるということになれば、 もちろん答申のあとになりますけれども、十分な都議会のご審議をいただく。それから法定外については同意を要する協議という自治省の制度がありますので、そちらでもあわせて、そうした手続をクリアをしていかなければならないということであります。
大木田特別委員
 法定外のことに関連して、私の考え方をちょっと申し上げておきますと、パチンコ税というのは大変おもしろいと思うんですね。かつて30兆で、今20兆ということでありますけれども、何でこんなにパチンコをする人が多いのかと、いまだにわからないんですけれども、ずっと私もそれは研究はしているんですけれども、しかし、これは大変おもしろいと思います。
 それからホテル税でございますけれども、「東京構想2000」では千客万来と。東京に多くの人が来ていただきたいということを打ち上げておりまして、特に国内はもとより海外の人が東京に来てほしいと。そうすると、いろいろと意見を聞いてみますと、東京のホテルは高い、物価も高いということもあるんですけれども、そういう意味で東京にはなかなかという部分で、そのほかシンガポール等のほうへ行ってしまう傾向があるんですが、私は臨海、お台場地域のホテルは、例えば今のホテルのあれを半分ぐらいにして、海外からもどんどん来れるというような形に限って、そこは何か税制措置を考えて限って、ハードルが低い地域があって、そうすると混雑するかもしれませんけれども、そういう考え方を持って、東京を千客万来の都市にするためにどうしたらいいかという、部分的にそういうハードルの低いところを設けたらどうかという考え方を持っている1人なんですけれども、そういうことから考えますと、100円程度のことについてはそんなに大差はないと思いますが、ホテル税という形でバーンとこれが出ちゃいますと、ちょっとかなと。今、生活文化局に観光課というのがあって、私は東京千客万来を打ち上げるんだったら、観光局をつくるぐらいの意気込みで対応すべきだという考え方を持っているぐらいでありますので、そういうことを考えますと、ホテル税というのは、背景はよくわかりますけれどもどうかなと、こういう考え方であります。
神野会長
 どうもありがとうございました。
 今のご意見を含めて、法定外税につきましては、これは最終的には都民、ひいては東京都議会が都民の皆さんのご意見を代表して決定していただくものでございますので、選択の1つとして考えていると。そのときの書きぶりも、したがって都民や都議会の理解が得られるように、なお一層課税目的と申しますか、課税をする意義というようなものを明確に書いておこうということだろうと思いますので、ちょっと書きぶり、その他、先ほどの水城委員のご意見じゃありませんけれども、都民の立場から理解が得られるような書き方にしていこうと思います。
 そのほかはいかがですか。
小倉委員
 今後の税制のあり方の8ページですか、「活力を生み出す税制」というところで幾つか出てきておりますけれども、芸術文化に対する寄付金控除の拡充というのは、これは大変結構なことだと思いますけれども、同時に障害者福祉を増進するための寄付金控除もぜひ入れていただきたい。
 ということは、障害者が働くための授産所等の社会福祉法人というのはありますけれども、ここは無税である。そこへ寄付しても無税である。ところが、この社会福祉法人というのは非常にハードルが高くて、1億以上の土地建物がないと認可にならない。実際に無認可の法人がやむを得ず、全国で約5,000あるんですね。無認可の法人が5,000あって、そこで下請等の共同作業をやっているわけです。
 そこで働いている人が一体給料をもらっているか、調べてみましたら、5,000の無認可法人で働いている障害者の給料が月収1万円。月にですよ。びっくりしました。調べてみると、月に2,000円、3,000円しかもらっていない人が多くて、1万円もらっている人もいる。平均すると、1万円。今どき1万円の給料で働いている人がいるわけですね。そこのところに頑張ってもらわないといけないと思うんです。ということは、認可法人になれば国から補助金が出ます。助成金が出ます。だけど、そうでなくて頑張っているところが自助努力をしていくということが大事だと思うんですね。自助努力をするのに、これを応援するための施策の1つとして、障害者福祉事業に対する支援については何らかの税制上の特典があってもいいんじゃないかと、かねがね思っているわけです。ぜひ、この辺もお調べの上、入れていただきたいと思います。  それから、ついでに言いますと、環境の問題でありますけれども、かつて戦後、日本のトラックが非常に発達していなかったときに、ディーゼルトラックを育成するためにいろんな制度ができました。大きくは軽油並びに灯油の値段がガソリンより安いとか、それから税制上の優遇措置がある、また高速道路における通行料金も、どちらかというと大型トラックが優遇されるという形で、あらゆる面で優遇されてきましたけれども、もうそういう時期は過ぎたと思います。つまり、そういったことが効果をあらわして産業が発展したけれども、今はデメリットのほうが見えてきた。
 そこで、軽油引取税の課税の適正化というのが9ページにございますけれども、これは当然やらなければいけない。特にこれに関連して、細かいことかもしれませんけれども、今、軽油引取税が自家用トラックと営業用トラックに差別がある。実際に自家用トラックよりも営業用トラックの軽油引取税を実質的に下げるという措置がとられているわけです。これは現実問題として軽油引取税は販売時点での課税ですから、自家用と営業用を差別することは手段としてできません。そこで、1年間、営業用トラックが使った軽油に対して、翌年度、各都道府県から交付金という形で助成金が出ているんです。いわゆる軽油引取税の、簡単な言葉で言うとキックバックがある。それは一般事業者には渡してはいかんということで、法人格のあるトラック協会、バス協会にだけ交付されるわけです。トラック協会で言うと、正確には私は知りませんけれども、今、大ざっぱに言って年間全国で150億、東京都でその1割ですから、15億の助成金が支給されております。こういうも のはもうやめるべきだと思うんですね。それは業者には返らないわけですから、トラック協会に滞留しておりまして、結局、何も使いみちは、有効に使われていないというのが現状です。この辺について、細かいことだけど必要だと。
 これと関連しまして、あとのほうの法定外税で出てきますけれど、ディーゼルトラック、大型トラックの首都高の利用に対する何らかの課税ということがありますけれども、これはちょっと問題があるのではないか。ということは、首都高にだけ課税するんじゃなくて、一般道路はどうするんだということになりますと、首都高に行ったほうがいいのか、行かないほうがいいのか。首都高を使うのをやめて一般道路に残ってしまったら、かえってこれはまずいんじゃないかという気がしますので、この辺のいろいろ具体的な方策については、よくご検討いただいたほうがいいんじゃないかと思っております。
神野会長
 ありがとうございます。
 最後のご指摘の点につきましては、一応小委員会のほうでも大分議論いたしましたけれど、何か事務局のほうから、全体を通してコメントしていただくことはございますか。
主税局長
 具体的なご指摘をいただきまして、そのご指摘の中で、無認可法人を含め、その辺の実態を調べた上で、どういうふうな扱いをするか、会長ともまたご相談したいと思います。
 それからトラック協会のお話がございましたが、これは9ページの②のところの税率構造の見直しのところで、営自区分、営業と自家用の区分を整理する、もうそういう時代じゃないというふうな表現をしてございますので、ここを整理しますと、お話のトラック協会に対する補助金も根っこがなくなるということになろうかと思います。
 それから最後の話は、今、会長からお話がありましたけれど、小委員会でも相当な議論があったようでございますけれども、私どもの考え方は、これはロード・プライシングなんですけれども、これまでの過去の首都高の料金の推移等を見ても、また損益分岐点のような考え方で、経費率、経費総体に占める高速道の利用料金のウェイト等もカウントいたしまして、一般道に逃げることはまずないだろうというふうに考えております。
 それから、当然、東京都は東京都という課税権の世界がございますので、本当は千葉、埼玉、あるいは神奈川等を含めて、高速道の関連の道府県とセットでもしやれば、一番効果が大きいということは重々承知しておりますけれども、とりあえずの入り口としては課税権のある首都高の東京エリアの中でこういうふうな考え方を出させていただきたいということでございます。
小倉委員
 今の最後の点ですけれども、ロード・プライシングはいい方法だとは思いますけれども、その弊害があっては困る。したがって、もし大型トラックを抑制するということでしたら、夜間を安くする。つまり、一般道路に夜間おりてこられると困りますけれども、深夜ならば高速道路を使って他県に逃げていくという通過交通がさばけるほうが、都民にとって都合のいい話ですから、だから昼間は高くなる、夜間は安くなるというようなことで、何かもう少しきめ細かくやれないかという気がいたしました。
神野会長
 そうしたら具体的な時間制その他は、書き込めるかどうか、ちょっと問題がありますが、少し検討させていただくということと、それから寄付金控除や、ご指摘いただいたディーゼル関係税、例えば寄付金控除というのは都立大学は寄付金控除の対象になりませんけれども、国立大学は寄付金控除の対象になりますので、ほかにもちょっと精査しておく必要がある問題があるかもしれませんので、ちょっと関係部局とも相談の上考えてみたいと思います。余り寄付金控除を出すということ自身も好ましいことでもないので、ちょっとそこら辺をバランスをとって考えてみたいと思います。水城委員、お待たせいたしまして、申しわけございません。
水城委員
 順不同で気がついたことを順番に申し上げます。
 これはこの前申し上げたけれども、軽油引取税の蔵出税化について、この結果、流通段階の課税がなくなりますから、かえって脱税業者を大喜びさせる結果にならないように気をつけなければいけないというのが最大のポイントでございまして、まさにここに書いてあるように不正摘発に万全を期す必要があるわけですが、これは東京だけでなくても全国的にきちっとした体制を整えないと、かえって大変なことになってしまう心配がありますので、そこら辺の対応策はきちっと書く 必要があるんじゃないかという点が1点。
 それから消費税のところで、中間報告では免税業者の免税点を引き下げろという書き方でしたが、ここでは3分の1程度という数字が入っております。今は3,000万円ですが、1,000万円程度以下にするということですが、これは実は大変なことでして、これをやりますと、多くの中小零細業者が消費税の世界に巻き込まれてしまうわけですね。なかなか実現が大変難しいところなんですが。
 消費税というのは事務負担が大変でございまして、国際的に見て免税点が高いのは非常に私も不愉快でございますし、問題点はあるんですが、日本の場合はいろんな事情であれで突入せざるを得なかった。今、もう定着しちゃっているわけですね。あれで税収が幾ら減っているかというと、全体から見たらほんのわずかの税収でございます。その税収の面と、それから中小零細業者の大変な事務負担とをはかりにかけまして、どっちが大事なのかなという、なかなかこれは難しい問題でございまして、どうして3分の1なのか、急に数字が入ってきましたので、ちょっと私も「おやっ?」と思っているわけでございますが、何か根拠があれば教えていただきたい。
 それから地価税とか特別土地保有税は廃止することが適当であるということでございますが、皆さんそういう意見ならこれでいいんですが、ただ私は前回も申し上げましたとおり、廃止には反対でございまして、有事に備えて凍結すべきであるというのが私の考え方でございますので、少数意見ということで、そういう意見もつけ加えていただければと。少数意見かどうかは知りませんけど、そういうふうに思います。
 それから、相続税・贈与税のところで、相続税の土地分は都道府県の税源としていくことを検討する必要があるということでございまして、これは今全部国に吸い上げられているんですが、もし土地分は都道府県の税源ということになりますと、恐らく東京都にドサッと税収が落ちてくることになりまして、ほかの自治体から見ると、何だと、こういうことになってしまうかもしれません。これは実は大変なことが書かれているわけでございます。ちょっとそこら辺は気になりますが、「中長期的には」と書いてありますから、こういう考え方もあるんだと。東京都の立場というのを主張する意味で、まあ、これはこれでいいのかと思いますが、若干そういう問題意識を持っております。
 それから贈与税のことが、今、中央のほうでもいろいろ自民党税調なんかで議論されておりますが、これは私ちょっと違うかもしれませんが、先ほども渋谷委員からご指摘があったように、一般庶民にとっては今の贈与税の免税点で十分なんですね。これをどんどん上げていくことは、だれが喜ぶかというと、結局、大金持ちが相続税を回避するために喜ぶだけのことでございます。ただ、景気対策とかいうことでやっているんですが、本当にこれが景気対策なのかどうか、そこら辺も私は疑問でございまして、長年据えおかれておりますから、見直してあげるのは結構だと思いますが、余りむちゃなことをやって、金持ちだけが喜ぶようなことにならないように留意してほしいということでございます。
 最後に、法定外税について申し上げます。いろんなおもしろいアイデアが出ておりまして、私も興味深く読ませていただきました。これはこれで結構でございまして、大いに検討したらいいと思うんですが、ただ、法定外税について全国的な傾向を見ますと、2つの特色があるんですね。1つは、直接地域住民に向い合わないで、選挙権のない法人がねらわれやすいというのが1つ。もう一つは、直接地域住民に向い合わないで、ほかから入ってくる人とか組織をねらう。熱海市の別荘税なんていうのが典型的なものですし、昼間の人口流入なんていうのもその考え方でございます。
 もちろん、そういう課税のやり方がいけないと言っているわけじゃないので、それはそれで大いにやったらいいんですが、同時に直接地域住民にちゃんと説明をして、このために税負担をお願いするんだということをやれば、もっと選択肢がたくさん広がってくるんじゃないかということでございます。例えばこれがいい例かどうかわかりませんが、杉並区がやっている小売店のポリ袋なんかに課税するというのは、あれはまさに地域住民に直接向かい合った、大変勇気ある提案だと思います。もちろん、問題点はいろいろございますけれども、そんなふうに直接地域住民に理由をちゃんと説明して理解を求めるということであれば、もっともっと選択肢がたくさん広がってくるんじゃないかということで、そういう点を特に私は申し上げておきたいと思います。
 それから、これは質問でございますが、法定外税、許可制から事前協議になり、規制は緩和されましたが、それでも自治省が「ノー」と言うと、これはできないわけでございます。そこで事前協議制の見直しということも指摘されているわけですが、具体的にどういうふうに見直したらいいのか、そこら辺ちょっとありましたら、お聞かせいただきたい。
 以上でございます。
神野会長
 どうもありがとうございました。
 最初の3分の1根拠というのは何かございますか。
主税局長
 これが直接のお答えになるかどうか、仕組みも違いますし、それから前提も違いますので、それを前置きして言わせていただきますと、例えばイギリスでは918万、約1,000万、これがいわゆる免点の上限でありまして、ドイツ、フランスはもうちょっと低いんですけれども、その辺の数字を頭の中に置いて、現行3,000万を3分の1というふうに、原案に入れさせていただきました。
神野会長
 それから2点目の地価税などにつきましては、国税と地方税のいわば税源配分にかかわってくるので、今のようなご指摘があるとすれば、もう少し変えた書き方をするかということも考えられるので、ちょっと考えてみたいと思っております。つまり、個別の財産税というのは応益原則で課税されるわけですので、地価税のような個別資産税というのは余り好ましくないということもあり得るわけですから。
 ここら辺、渋谷先生、資産税委員会か何かで議論ございましたか。
渋谷委員
 委員会でも、廃止よりは凍結ぐらいのほうがいいのではという意見もございました。
神野会長
 書きぶりを少し斟酌させていただくということにさせていただきます。
 それから法定外につきましては、考えれば、おっしゃるとおりにたくさんのアイデアが出てくるわけで、ただご指摘いただいた法人とか、それから選挙権のない人に対してねらい撃ちをするというようなことは、今回はできるだけ避けたつもりでございまして、むしろ環境を悪化する汚染者に負担を求めるというようなトーン、ないしは生活環境をよくする点とか、いわば税収そのものを目的にしていないような税金が多いわけですね。ホテル税などについても、国際都市、国際の交流 都市として充実させていくという目的で課税されておりますので、ともすれば選挙権のない人に課税するという傾向に走りがちなのですけれど、そういう傾向はそう大きくはないのではないかと思っております。ただ、書きぶりその他で修正すべき点がございましたら、修正させていただきたいと思います。
 そのほか、意見ございますでしょうか。
古館特別委員
 時間があれですので、これからの議事進行といいますか、冒頭で会長が今後のスケジュールについてちょっとお話があったんですが、第1章の部分と最後の第6章の部分、関連してあるんですが、それで第6章のほうは財政再建プランみたいなのも含めて、ここに載っかっているんですが、ここをこういうふうに載せなければいけないのかどうかという、意見はあとでまた……。きょうだけじゃなくて、会長、まだあるんですよね。
神野会長
 はい。
古館特別委員
 だったら、そのことをきょうは述べることはしませんけれども、ここに財政再建推進プランみたいなのが出てきている背景については、どういうことでしょうか。
神野会長
 ちょっとお答えいただく前に、もう時間も押し迫っておりますので、できれば、もしもこのほかに問題点その他がございましたら、先ほど申しましたように、あと2回やるつもりではございますが、次回を29日、その次を30日で予定しておりますので、29日までに、できれば大きな修正はそこで終えたいと思っております。そこで、きょう時間がなくて、こういう意見があるのに時間的な問題で出せなかったという場合には、事務局のほうに出していただいて、私のほうと事務局のほうとで相談させていただいて、29日に草案を出す段階で反映させていただくということで処理させていただくことでよろしいですよね。
 都の財政再建について、局長のほうから。
主税局長
 前回の総会で、東京都の税制調査会であるからには、都の分ももう少しきちっと書いたらどうだというふうなご意見が幾つかございまして、それを1つ1つに書き込むと、かえって見えなくなるということがございますので、別項を起こしたと。そのときに、はっきり都の分がこういうふうになるんだということを明確にするために書いたと、そういうことでございます。他意はございません。
神野会長
 全体を通してそうなんですが、前回も都の姿勢ないしは都の財政問題に触れるようなご意見がございましたので、中に大分取り入れて加筆修正させていただいております。
 ほかに、ご意見、いかがでございましょうか。
 それでは、そろそろ時間でございますので、本日の審議はこれまでにしたいと思いますが、きょう、もしもお出しいただけなかったようなご意見がございましたら、一括、事務局のほうに出していただいて、私と事務局のほうで相談させていただいて対応し、かつ次回にその案を踏まえて出したいというふうに考えております。そういうことで、次回までには、きょうお出しいただいた意見、それからこれからお出しいただく意見を踏まえた修正をしたいと思っております。
 次回は、もう既にございましたけれども、11月29日水曜日午後2時からを予定してございますので、ご予定のほうをご確認いただいて、ご高配いただければと思います。
 それから、本日午後、この答申の基本的な事項につきまして、簡単なブリーフィングをプレスにしたいと思っておりますので、事務局からこれを行います。この点についてもご承知おきいただきたいと思います。
 それでは、本日はどうもお忙しい中をご参集いただきまして、ありがとうございました。また、お聞き苦しい司会で、申しわけございませんでした。お詫びいたしまして、これで閉会させていただきます。どうもご協力ありがとうございました。
(閉会)

(本議事録は、調査会開催後、速やかな公表に努め、限られた時間内にとりまとめるため、事務局である東京都主税局において作成した資料です。内容には正確を期していますが、事後の修正の可能性があることをご承知置きください。)